税務調査と重加算税

1 重加算税とは?

重加算税とは、納税者が「隠蔽又は仮装」をして税務申告を行った場合に課される追加的な税金です。

これは、国税通則法第68条第1項に定められており、ペナルティとして通常の過少申告加算税よりも高い税率(35%~50%)が適用されます。

2 重加算税の適用要件

上述したように、国税通則法第68条第1項では、納税者が「隠蔽又は仮装」を行っていた場合に重加算税を課すと定めています。

しかし、「隠蔽又は仮装」とは具体的にどのような行為を指すのか、法律上明確な定義はありません。

そこで、税務調査の実務においては、国税庁の事務運営指針が判断基準として用いられることとなります。

3 事務運営指針とは?

事務運営指針とは、国税庁の内部規則であり、国税の内部事務を行うにあたって国税全体が守るべき統一的ルールのことです。

したがって、税務署の調査官が守るべきものであるものの、法律とは異なり納税者を直接拘束するものではありませんが、税務調査に対応する上で、その内容を理解しておくことは非常に重要です。

4 重加算税の対象となる行為

所得税等の事務運営指針では、主に次のようなケースが「隠蔽又は仮装」に該当し、重加算税の対象となるとされています。

  • 二重帳簿を作成した場合
  • 帳簿書類を破棄、隠匿した場合
  • 帳簿書類を改ざんした場合
  • 相手方と通謀して虚偽の資料を作成した場合
  • 意図的に集計を間違って計上した場合
  • 課税の特例の適用を受けるため虚偽の証明書を作成した場合
  • 源泉徴収票や支払調書等を改ざんした場合
  • 税務調査で虚偽の答弁等を行い申告時における隠蔽又は仮装が合理的に推認される場合

5 重加算税の立証責任と実態

税務署が重加算税を課すためには、納税者が「隠蔽又は仮装」を行ったことを基本的には税務署側が立証する必要があります。

つまり、税務署側が確たる証拠を提示できなければ、重加算税を賦課することはでないのです。

これは、税務署にとって、一般の方が考える以上に高いハードルです。

しかしながら、実際の調査の現場では、税務署の調査官の「重加算税の対象である」との主張に対して納税者側が明確な反論をせずに、詰めた議論が行われないまま重加算税が課され、結果として納税者がそれを受け入れるということが往々にして生じます。

6 重加算税の影響

重加算税が賦課されると法人や個人にとって深刻な影響を及ぼします。

主な影響は次のとおりです。

⑴ 重加算税の税率と調査対象期間

重加算税の税率は最低35%で、場合によっては最高50%にまで引き上げられます。

さらに、通常の税務調査では最大5年分が対象となりますが、「偽りその他不正の行為」が認められた場合には、調査対象期間は最長7年に延長されます。

「仮装又は隠蔽」と「偽りその他不正の行為」は必ずしも同義ではありませんが、長期にわたる不正が行われた場合には、7年分の調査が行われることも珍しくありません。

⑵ 追徴税額のシミュレーション

仮に毎年100万円の本税(所得税・法人税等)が追徴された場合、以下のような納税額の違いが生じます。

① 重加算税が課されない場合

  • 本税:100万円×5年=500万円
  • 過少申告加算税(10%):100万円×10%×5年=50万円
  • 合計納税額:550万円

② 重加算税が課される場合

  • 本税:100万円×7年=700万円
  • 重加算税(35%):100万円×35%× 7年=245万円
  • 合計納税額:945万円

このように、重加算税が課されると本税と加算税を合わせた納税額が約1.7倍に膨れ上がります。(なお、上記の試算には地方税は含まれていません。)

⑶ 延滞税の負担増加

納付期限内に納付が行われない場合、延滞税が発生します。

通常、納付期限から1年を超える期間については延滞税が課されません(除算期間)。

しかし、重加算税が課された場合にはこの除算期間が適用されず、延滞税の負担が大幅に増加する可能性があります。

⑷ 青色申告取消のリスク

重加算税が課された場合、金額によっては青色申告の取消処分を受ける可能性があります。

これにより、青色申告の特典(損失の繰越控除、特別控除等)が利用できなくなり、税負担が一層重くなります。

7 重加算税を回避するために

重加算税を課されないために最も重要なことは、当然ながら「隠蔽又は仮装」を行わないことです。

しかしながら、不幸にも知識不足や誤解により「隠蔽又は仮装」を疑われるケースが生じることがあります。

そのような場合でも安易に諦めないでください。

そして、なるべく早く税務調査に強い税理士に相談することをお勧めします。

特に、税務調査の開始前に対策を講じることで、リスクを大幅に軽減できるケースもあります。

8 税務調査に強い税理士の活用

税務調査では、税務署側の指摘に適切に対応することが求められます。

特に、重加算税が問題となる場合は、豊富な経験と専門的な知識が必要です。

税務調査に強い税理士がサポートすることで、税負担を大幅に減らせる可能性があります。

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