税務調査を拒否したい・逃げたい

1 税務調査を拒否できるか(法的根拠)

できることなら税務調査を拒否したい、逃げたいと思う方は多いのではないでしょうか。後ろめたいことがあればもちろんのこと、正しく申告を行っているつもりでも、税務調査があれば相当のストレスとなり、税務署から連絡があっても無視したいと思うかもしれません。

しかしながら、税務調査には法的根拠があり、調査を免れることはできません。国税通則法74条の2では、所得税、法人税及び消費税等について、税務署等の職員に質問検査権(質問、帳簿書類等の検査、提示・提出を求める権利)を認めていますので、税務調査を拒否することはできないのです。

2 税務調査を拒否した場合の罰則

税務調査を拒否した場合、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という罰則が国税通則法で定められています。実際にこの罰則が適用される可能性は高くありませんが、この罰則を受けなかったとしても、税務調査の拒否には相当のリスクが伴います。

3 税務調査を拒否した場合のリスク

以下のとおり、税務調査の拒否には、上述した罰則以上に大きなリスクが潜在しています。

⑴ 青色申告の取消

税務調査を拒否した場合、帳簿書類を提示しなかったとして、青色申告の取消しが行われる可能性があります。青色申告には多数の特典がありますが、これを取消されることにより、それらの特典が受けられないこととなります。

⑵ 推計課税の適用

税金の額を推定して計算した金額で課税することを推計課税といい、税務調査の際に調査対象者が十分な資料を提示せず税金の計算が困難である場合に行われます。推計には、同業他社の利益率、資産の増減状況、電気・ガス・水道の使用量など様々な数値が用いられますが、実額による計算よりも高い税額となる場合も多々あります。

青色申告の場合、推計課税はできないこととされていますが、青色申告を取消されることにより推計課税が行われる可能性が生じます。

⑶ 反面調査

調査対象者の取引先に対して行われる調査を反面調査といいます。調査拒否等により、調査対象者から提示された資料によって事実関係の把握が困難であると税務署が判断すれば反面調査が行われる可能性があります。

反面調査が行われると取引先等の不信感を与えることにもなりかねませんので、できる限り避けたいものです。

⑷ 消費税における仕入税額控除の否認

一般的に消費税は、課税売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を差引く(「仕入税額控除」といいます。)ことによって計算されます。法令上、仕入税額控除を受けるためには帳簿と請求書を保存する必要があります。

調査を拒否し税務署に帳簿を提示しないことが帳簿を保存していないことと判断され、仕入税額控除が認められない場合があります。

4 税務調査を回避する方法

上述したように税務調査を拒否する方法はありませんが、なるべく調査に入られないようにすることは大切です。

⑴ 適正な申告

当然のことですが、申告期限内に適正に申告を行うことが、税務調査の対象となるリスクを下げることに繋がります。

期限後申告が目立つと税務署に杜撰な申告を行っているという印象を与えます。また、申告書や添付書類の誤りが散見されると自ずと税務調査の対象となる確率も高まりますので、期限内に適正な申告を続けることが肝要です。

⑵ 書面添付

提出する申告書に「税理士法33条の2に規定する添付書面」という書面を添付することを「書面添付」といいます。書面添付を行うことにより税務調査が入る確率が大きく下がることが国税庁の公表データから明らかになっています。

書面添付をした場合、原則として税務署は税務調査に入る前に税理士の意見を聴取しなければならないこととされています。意見を聴取した後に、調査が行われる場合もありますが、税務署が調査を要さないと判断し調査が行われないことも多々あります。

⑶ 適正な調査対応

税務調査は申告納税制度を維持するために重要なことと位置付けられていますので、適正な申告を行い、書面添付を行ったとしても、残念ながら税務調査を完全に回避することはできません。

しかしながら、たとえ税務調査が行われたとしても、申告の内容が適正であり追徴課税が発生しなければ、再び税務調査の対象となるリスクは低くなります。その観点から、最初の税務調査対応は非常に重要であると考えられます

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