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1 個人事業主の方には税務調査は来ないのか
個人事業主の方には税務調査は来ないと考える向きも多いようですが、個人事業主であっても税務調査は行われており、実際に私も何度も立会った経験があります。また、白色申告であっても青色申告の場合と同様に税務調査は行われます。
2 税務調査の対象
個人事業主の方で税務調査の対象となり易いのは次のような場合です。
⑴ 申告書を提出していない、または正しい収入金額を申告していない場合
申告すべき収入があるにもかかわらず申告書を提出していない場合、または正しい収入金額申告をしていない場合に税務調査が行われることがあります。
⑵ 収入に比し所得水準が低い場合等
他の同業者と比べて収入金額に対する所得金額(利益)が低い場合、または収入金額が増加しているにもかかわらず、所得金額が増加していない場合に税務調査が行われることがあります。
⑶ 収入金額が毎年900万円前後で推移している場合
基準期間(原則として2年前)の課税売上高が1,000万円を超える場合、消費税の申告をする義務が生じます。収入金額を毎年900万円前後で申告し消費税の申告をしていない場合、消費税の申告義務がないかを確認するための税務調査が行われることがあります。
⑷ FXや暗号資産等の取引がある場合
FXや暗号資産等の多額の取引があり、適正な申告をしていない場合に税務調査が行われることがあります。
⑸ 給与所得者が副業による還付申告を行っている場合
給与所得者(サラリーマン等)の方が副業を行い赤字になったとして還付申告をしている場合に税務調査が行われることがあります。
3 白色申告の場合の税務調査
上述したように、白色申告であっても税務調査は行われます。
私の経験上、白色申告の方には帳簿を作成していないケースが多く見受けられます。以前と異なり、現在は白色申告であっても青色申告の場合と同じように帳簿を作成し保存する義務があります。帳簿や領収書等が保存されていない場合には、所得税の経費計上や消費税の課税仕入れが認められない可能性があります。
4 税理士にできること
⑴ 税務調査前の申告書の作成
税務調査により申告書の誤りが指摘され修正申告書を提出した場合には所得税、消費税等の他に加算税の納付を求められます。また、申告書を提出していない方が、税務調査後に申告書(「期限後申告書」といいます。)を提出した場合も同様です。
やむを得ず適正な申告を行っていなかった場合には、税務調査以前に修正申告書または期限後申告書を提出することによって、加算税を免れることができます。
⑵ 税務調査の立会
税理士が税務調査に立会うことによって、次の負担を軽減することができます。
① 心理的負担
税務調査が行われる場合には、たとえやましいことがなかったとしても、多大なストレスがのしかかるものと思われます。経験豊富な税理士が寄り添うことによって、このような心理的負担を軽減することができます。
② 時間的負担
税務調査に御自身のみで対応した場合、税務署との折衝等に相当の時間を割かれることとなります。これを税理士が行うことによって、個人事業主の方にとって貴重な時間を本業に充てることができます。
③ 経済的負担
税務調査によって申告に誤りがあると判断されると、税務署から追加での納税を求められます。その額は個人事業であっても数百万円を超えることも珍しくありません。このような場合、税務署の主張が合理的なものであるか一般の方では判断することが難しいこともあるかと思います。税理士であれば税務署の主張を精査し、税務署と折衝することによって、納税額を少なくなるできる場合があります。
④ 取引先の負担
税務調査に際して、税務署が取引先への事実確認のための調査(「反面調査」といいます。)を行う場合があります。反面調査が行われた場合、取引先に手間をかけさせるばかりか、税務申告に問題があったのではないかという疑念を取引先が抱くこともあり信用を失うことにもなりかねません。
税理士が税務署と粘り強く折衝することによって、このような反面調査を回避できる場合があります。