このページの目次
1 申告のやり直しについて
「適当な申告をしてしまったので、税務署がくる前に申告をやり直したい。」というご相談を受けることがあります。
申告書の提出後に申告書の誤りに気付き、それを訂正する場合には、原則として「修正申告書」または「更正の請求書」を提出することとなります。
納めた税金が少なすぎた場合は「修正申告書」を、納めた税金が多すぎた場合は「更正の請求書」を提出することとなります。
2 修正申告書について
⑴ 修正申告とペナルティ
申告書を提出して納めた税金が少なすぎた場合のほか還付を受けた税金が多すぎた場合には修正申告の対象となります。
修正申告書を提出したことにより納める税額が生じた場合は、本税(法人税や所得税等)に加えて加算税と延滞税というペナルティに相当する税金が課される場合があります。
加算税、延滞税の金額は修正申告書を提出するタイミングによって変わってきますが、基本的には速く提出するほど金額も抑えられますので、できるだけ早く提出することが重要です。
⑵ 加算税について
修正申告書を提出し税金を追加で納めることとなった場合、納める税額にペナルティとして過少申告加算税(または重加算税)が加えられます。税務署から調査を行う旨を通知された後に修正申告書を提出した場合は、調査の進行状況や税額に応じて5%から15%の過少申告加算税が課されます。
また、当初に提出した申告に隠蔽等が行われていたと判断された場合は35%の重加算税が課されます。これに対して、税務署からの通知がある前に自主的に修正申告書を提出した場合、加算税は課されません。
⑶ 延滞税について
修正申告によって追加で納める税金の利息に相当するものが延滞税です。延滞税は本税(法人税や所得税等)に一定の割合を乗じて計算されます。割合は原則として納期減の翌日から2か月間は年7.3%、その後は14.6%ですが、現在は特例により軽減されており割合は期間によって異なります。
また、延滞税には計算期間から除かれる期間(除算期間)があり、修正申告と同時に本税を納めた場合、延滞税が課されるのは1年分のみとなります(重加算税が課される場合を除きます。)。
⑷ 税務調査
修正申告書を提出すると、おのずと税務署の目に留まりやすくなりますので、税務調査の対象となる可能性が高くなります。せっかく間違いを正すために修正申告をするのですから、税務調査によって再び追加で税金を納める事態は避けたいところです。
修正申告書の作成を税理士に任せることよって、税務調査の際に問題となりにくい申告書を作成することが可能です。また、税務調査の対象となった場合も税理士が調査に立会うことができますので、税務署と対峙する心理的な負担を軽減することにも繋がります。
3 更正の請求書について
⑴ 修正申告書との違い
申告書を提出して納めた税金が多すぎた場合のほか還付を受けた税金が少なすぎた場合には更正の請求書を提出することで、税金の還付を受けられる場合があります。
修正申告の場合は申告することによって直ちに追加の納税義務が生じますが、更正の請求書の場合は提出することによって直ぐに税金の還付を受けられる訳ではなく、提出後に税務署が行う更正という処理を経て還付を受けられるという制度になっています。
⑵ 証明書類の提出
更正の請求書には、税金を多く納め過ぎたこと等を証明する資料の添付が義務付けられています。また、立証責任は納税者の側にありますので、税務署から要求があった場合には、税務署が更生すべきと判断するに足る資料を追加で提出する必要があります。
なお、更正の請求書を提出できる期間は法定申告期限から原則5年間となっていますので、過去の申告の誤りに気付いた場合は早めに対応する必要があります。
⑶ 税務調査
修正申告の場合と同様に更正の請求書の提出に起因した税務調査が行われることがあります。税金が還付されると思って更正の請求書を提出したところ、反対に税務調査によって追加で税金を納めることを余儀なくされるということも珍しくありません。このような事態を避けるためにも、当初より正しい申告書の提出を心掛けることが肝要です。