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無予告調査が行われる根拠
税務署が事前の連絡なしに法人や個人事業主の事務所や店舗を突然訪れ、調査を行うことを「無予告調査」といいます。
税務調査は事前に通知があるのが原則ですが、国税通則法第74条の10では、以下のような場合には事前通知なしで調査を行うことができると定められています。
「申告内容や過去の調査結果、事業内容に関する情報、または国税庁・税関が保有する情報などを考慮し、違法または不当な行為を助長する恐れがあり、適正な課税標準や税額の把握が困難になる場合、または国税調査の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあると認められる場合」
また、国税庁は国税通則法第7章の2(国税の調査)等関連通達において、この規定の解釈を公表しています。
無予告調査の実施要件と税務署の対応
無予告調査が実施されるには、上記の法令や通達の要件を満たす必要があるということになりますが、これらの規定は一般の方には理解しにくいものです。
さらに、税務署には無予告調査の理由を納税者に開示する義務がないため、調査対象となった法人や個人がその具体的な理由を知ることはできません。
無予告調査の対象となるケース
法令や通達では、どのようなケースで無予告調査が行われるかが明確に示されているわけではありません。しかし、以下のような状況では、事前の通知なしに税務調査が実施される可能性が高いと考えられます。
- 売上除外や架空経費計上などの不正行為が疑われる場合
- 帳簿の改ざんや証拠隠滅のリスクが高いと判断された場合
- 過去の税務調査で重大な申告漏れや不正が発覚した場合
無予告調査の対象となりやすい業種
無予告調査の対象は、特定の業種に限定されるものではありません。しかし、特に現金取引を主体とする業種は対象となりやすい傾向にあります。
具体的には、以下のような業種が挙げられます。
- 飲食業
- 小売業
- 美容業・理容業
- その他のサービス業
現金取引の多い業種がターゲットとなる理由
現金取引では、銀行振込やクレジットカード決済等と比べて入出金の履歴が残りにくく、売上の申告漏れが発生しやすいと考えられています。
特に、個人客を対象とする業種では、レシートや領収書の発行が徹底されていないことが多く、売上の一部を意図的に計上しないケースも想定されます。
国税庁の通達では、現金取引をしているということのみをもっては事前通知をしない場合に該当しないとしています。しかしながら、敢えて現金取引に言及されている点からも、税務署が特に注目していることがうかがえます。
無予告で税務調査が来た場合の対処法
税務調査を拒否することはできませんが、任意調査の場合には正当な理由があれば日程を変更してもらうことは可能です。
この日程変更の交渉は、できれば調査官を事務所や店舗の中に入れずに、外で行うべきです。
調査官を事務所等に招き入れると調査官のペースで事が運び、なし崩し的に調査が行われる展開になりがちですので、できれば調査官に外で待機してもらい、当日に調査が受けられない理由を真摯に説明するのが望ましいと思われます。
また、顧問税理士がいる場合、税理士に連絡し税理士に日程調整を行ってもらうことも可能です。
一般的には税務署側が税理士に連絡をしますが、調査を受ける納税者も積極的に税理士と連絡をとるべきです。
無予告調査に強い税理士の重要性
顧問税理士が税務代理人となっている場合、税務調査が行われる際には必ず税理士が立ち会います。そのため、無予告調査を受けた場合は、まず速やかに税理士に連絡することが重要です。
しかし、すべての税理士が無予告調査の対応経験を持っているわけではありません。
突然の税務調査に適切に対処するためには、日頃から正確な会計処理を行い、税務調査に精通した税理士のサポートを受けることが不可欠です。
特に、先に記した無予告調査の対象になりやすい業種を営んでいる場合は、税務調査に強い税理士を選ぶことが、リスク回避の大きなポイントとなります。
税務調査の経験が豊富な税理士のサポートを受けることで、税務リスクを最小限に抑えることができます。